大動脈ステントグラフト
ステントグラフト内挿術とは
ステントグラフトとは金属の骨格構造を持つ特殊な人工血管です。これを細くした状態で足の付け根にある大腿動脈から血管内に挿入(内挿)して、胸部や腹部を切開せずに大動脈瘤の部分まで運搬し大動脈瘤の内側で拡張させ血液が流れるトンネルとして留置することで、大動脈瘤にかかる圧力を減らそうという治療法です。切開は足の付け根だけで開胸や開腹を要さず、また人工心肺も必要としない低侵襲な治療法です。術後経過に問題がなければ5日から1週間程度で退院できます。
現在、国内でステントグラフト治療に用いることができるデバイスは胸部用が3機種、腹部用が4機種ですが、担当医は全てのデバイスの指導医の資格を有しており、当院ではすべてのデバイスの中からそれぞれの大動脈瘤に適した最善のデバイスによる治療が可能です。


ステントグラフト内挿術は低侵襲で魅力的ですが、すべての患者さんにこの方法が適しているとは限りません。治療法としてステントグラフトを選択すべきか、あるいは人工血管置換術の方が良いかどうかは、患者さんごとに異なります。大動脈瘤の場所や形、あるいは患者さんの全身状態によって適切な治療法を選ぶべきなのです。そのためには、人工血管置換術とステントグラフト内挿術の両方の治療法を得意としている病院で最善の治療を受けることが重要だといえます。
慶應義塾大学病院での取り組み
当院では以前から大動脈瘤の治療を得意として非常に多くの手術を行ってきたと同時に、早い段階(1998年)からステントグラフト内挿術も行ってきました。従って、人工血管置換術、ステントグラフト治療ともに経験は豊富であり、近年、その数はさらに増加してきています。最近では、通常のステントグラフト治療が困難な複雑症例に対しても開窓型ステントグラフトの使用や、血管手術とステントグラフト治療を組み合わせたハイブリッド治療によって治療の低侵襲化を図る取り組みも積極的に行っています。
[Image Movie]胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術[Image Movie]腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術
[Image Movie]ステントグラフト内挿術(胸部、腹部)
大動脈
ステントグラフト

開胸や開腹を要さない低侵襲な治療法。当院は、国内有数の豊富な大動脈瘤治療実績を有し、特にこのステントグラフト治療は人工血管手術とともにトップランナーとして近年さらに増加し続けています……
経皮的中隔心筋焼灼術 PTSMA

症状のある、薬物治療抵抗性の閉塞性肥大型心筋症に対して、カテーテルを使用して純エタノールにより閉塞責任中隔心筋を焼灼壊死させる治療法です。最大の特徴は「低侵襲性」(体力の消耗や傷口が小さい)です。
経カテーテル大動脈弁留置術 TAVI

重症の大動脈弁狭窄症で、開胸手術による治療が不可能または 非常に困難な患者さんに対する全く新しい治療です。大動脈弁をただバルーンで拡張するだけでなく弁を留置してくる治療法です。
経皮的僧帽弁裂開術 PTMC

カテーテルを用いて足の動脈から直接心臓に到達、硬くなった弁にイノウエ・バルーンを運び、そこでバルーンを広げて、硬くなった僧帽弁を広げる治療。心臓手術に比べ開胸術でなく、患者さんの負担は少ない。
バルーン肺動脈形成術 BPA

局所麻酔下で行う侵襲性の低いカテーテル治療。PEAの適応外とされる高齢者、全身麻酔が困難例、末梢型のCTEPHに対しても治療可能である。複数回の治療により、PEAと同様に根治が期待できる。